【お詫び】
今回から「塾長の述懐シリーズ」の回数を数字(例:今回の場合〔10〕)で表現することにしました。ご諒解ください。
1 「セレンディピティー」と「学縁」
皆さん,こんにちは。
生きる自分への自信を持たせる「鍛地頭-tanjito-」塾長の小桝雅典です。
〈学問(探究活動)〉は本当に楽しいものです。
私は前回の「塾長の述懐」シリーズで,次のように記述しました。
「小さな疑問」を含め,自らの脳裡に解決しなければならない問題が宿ったとき,「文献探しの旅」と決め込むことなく,何気なく書店や図書館で手にする書物に,その問題を解決する主たる内容(鍵)が記されていることが度重なるようになりました。
「塾長の述懐 第9回 脱現行受験社会(2019.5.19(Sun.))」(小桝雅典,BLOG「鍛地頭-tanjito-」,2019.5.19)…a
こうした現象を「セレンディピティー(serendipity)」と呼びます。
セレンディピティー
コトバンク:セレンディピティー(英語表記)serendipity,精選版 日本国語大辞典
〘名〙 (serendipity) 求めずして思わぬ発見をする能力。思いがけないものの発見。運よく発見したもの。
[補注]イギリスの作家ホレス=ウォルポール(一七一七‐九七)の造語。寓話 The Three Princes of Serendip (一七五四)の主人公にこのような発見の能力があったことによる。Serendip はセイロンの旧称。
つい,先日のことでした。副塾長の住本が研鑽を積むため,「第1回 発達障害コミュニケーション初級指導者認定講座 」(一般社団法人 日本医療福祉教育コミュニケーション協会)に出向いた時のことです。
講座中,住本は当該の講座で使用されていたテキストを読んでいて,ある記述箇所に目が釘付けとなったのです。
◆食事と多動の関連
『一般社団法人日本医療福祉教育コミュニケーション協会 認定 発達障害コミュニケーション初級指導者テキスト』(河野政樹,一般社団法人日本医療福祉教育コミュニケーション協会,2015.10,p.10,下線は筆者が施しました。)
食事と多動との関連が指摘されているものの代表格に食品添加物(食色素 Artificial colorings)がある。報告があるものは,sunset yellow FCF(E110),quinoline yellow(E104),carmoisine(E122),allura red E129),tartrzine(E102),ponceau 4R(E124)などがある。また,ショ糖は,直接,ADHDと関連があるわけではないが,摂取後1hrは,気分が落ち着くが,その後で多動性を増すことが知られている。他に,脂肪酸の中で,ω3ω6不飽和脂肪酸の不足に関連があるのではないかという報告も散見する。
前回の「塾長の述懐」を綴っていた―本ブログを認(したた)めている約1週間ほど前―私は,「「鍛地頭-tanjito-」のダイエット論」(いずれブログにします。)と絡め,知識注入型教育に偏重してしまった現教育界と受験産業界からのシフトチェンジに係る持論を住本に語る中で,この「食品添加物」や「上白糖(ショ糖が主成分)」(引用中の下線部)について(くどくどと)説明を繰り返していました。
それ(筆者注:主に知識量を測定の対象とする現受験社会(=「受験」という名の現象)は,コンビニ弁当をしゃかりきになって食べながら,身体の健康(ダイエット)を唱える社会現象と通底しています。というのは,身体の健康(ダイエット)には加工食品が最も良くない,自然から与えられた新鮮なキャベツに包丁を入れることさえ「加工」だとの説がある中,せっせと身銭を支払って,地球上で最たる加工食品(添加物いっぱい)であるコンビニ弁当を食べる,つまり,お金を払って身体に毒を盛るのと同様に,せっせと大金を支払って「地頭力」を弱める,知識偏重型の受験テクニックだけを教える予備校や進学塾等に(嫌がる)こどもを通わせているからなのです。
前掲ブログa,下線は本ブログのため,筆者が施しました。…b
かつて,91㎏あった体重を約11か月で,一切苦労することなく,58㎏にダイエット(-33㎏)した私には,ダイエットのフィールドにおいて「食品添加物」や「上白糖」が身体に及ぼす悪影響について自学自習した際の知識がありました。そういう理由で,上記引用文中(b)にあるような比喩として「加工食品(添加物いっぱい)」(=食品添加物)を持ち出していたのです。したがって,住本にも同様の知識があったわけです。
ところが,講義中に,住本の脳裡では「食品添加物-多動(HD)」との連関が構築されることになったのです。つまり,「受験社会―食品添加物」の図式に加え,「食品添加物」を媒介として,「食品添加物―多動(HD)」という新たな構図が住本の情報(記憶)として脳裡にインプットされたわけなのです。ですから,後日,住本がアウトプットしたその一連の情報を聴いた私の脳裡にも,「食品添加物-多動(HD)」が新たにインプットされることになったのです。
言わずもがな,住本や私は当初から計画的に「食品添加物―多動(HD)」の連関性を追究していたのではありません。「受験社会―食品添加物」の連関性を考究していくうちに,偶発的に,運よく,思わぬ「食品添加物―多動(HD)」の連関性に出くわしたのです。ただし,その偶発性は「受験社会―食品添加物」の連関を考え続けていなければ顕現しなかったものであり,そういう意味では蓋然的であったと言えるのかもしれません。
このように,上述した現象を私を起点に整理し直したとき,「私―住本」の〈学び〉を仲介役とする連関が前提として存在し,そこに偶発的蓋然性をもって「受験社会―食品添加物」及び「食品添加物-多動(HD)」の連関(情報)がインプットされたことは「セレンディピティー(serendipity)」と呼べる現象であるとともに,〈学ふ者同志の縁〉が「受験社会」,「食品添加物」及び「多動(HD)」という新たな〈学びの縁(連関性)〉と邂逅(かいこう)した,まさに〈学縁〉そのものであったと言えるのです。
ただ,如何なる力学がそこに作用し,こうした「セレンディピティー(serendipity)」(≒偶発的蓋然性)が成立するのか,私には解りません。ですが,恒常的に学んでいないと(=小手先の受験学力の育成だけではなく,「地頭」を「鍛」えていないと=「鍛地頭」でないと)成立しないものであることは理解できるのです。ただし,私も忌忌しき受験世代を生かされてきた人間の一人です。ですから,所謂受験学力を付ける上での学習において「セレンディピティー(serendipity)」が全くなかったとは申し上げません。また,「地頭力」に包括される極一部の能力として受験学力の存在を否定するものでもありません。しかし,「地頭」を「鍛」える研究(探究)活動に比し,受験テクニックを身に付ける上において「セレンディピティー(serendipity)」が現象化することは圧倒的に少なかったことに間違いはありません。そして,このことは私だけの体験ではないと考えるのです。
だからこそ,〈学び続けること(=「地頭」を「鍛」え続け続けること=「鍛地頭」であり続けること)〉が大切なのです。
【関連】
「BLOG記事ランキング(当塾比)&総評〔2018.2.2~2019.5.26〕」(小桝雅典,BLOG「鍛地頭-tanjito-」,2019.5.26)
令和元年5月26日(日)
塾長 小桝 雅典
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【過去の「塾長の述懐」シリーズ】
- 「塾長の述懐 第9回 脱現行受験社会(2019.5.19(Sun.))」(小桝雅典,BLOG「鍛地頭-tanjito-」,2019.5.19)
- 「塾長の述懐 第8回 脱自我中心主義(2019.5.5(Sun.))」(小桝雅典,BLOG「鍛地頭-tanjito-」,2019.5.6)
- 「塾長の述懐 第7回(2019.4.28(Sun.))」(小桝雅典,BLOG「鍛地頭-tanjito-」,2019.4.28)
- 「塾長の述懐 第6回(2019.4.21(Sun.))」(小桝雅典,BLOG「鍛地頭-tanjito-」,2019.4.23)
- 「塾長の述懐 第5回(2019.4.7(Sun.))」(小桝雅典,BLOG「鍛地頭-tanjito-」,2019.4.17)
- 「塾長の述懐 第4回(2019.3.31(Sun.))」(小桝雅典,BLOG「鍛地頭-tanjito-」,2019.4.17)
- 「塾長の述懐 第3回(2019.3.24(Sun.))」(小桝雅典,BLOG「鍛地頭-tanjito-」,2019.4.17)
- 「塾長の述懐 第2回(2019.2.3(Sun.))」(小桝雅典,BLOG「鍛地頭-tanjito-」,2019.4.17)
- 「塾長の述懐 第1回(2018.6.26(Tue.))」(小桝雅典,BLOG「鍛地頭-tanjito-」,2019.4.17)
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