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〈言語(運用)能力〉の育成を主眼にした朝の一斉読書!!(vol.1 The host’s nightly big incident )

木目の机上に置かれた2冊の古い本。その1冊の表紙の上に置かれた3枚の紅葉した葉っぱ。 「鍛地頭-tanjito-」の教育論(実践編)
読書の秋9(提供 photoAC)
この記事は約11分で読めます。

教育活動には種々の態様があります。また,一つひとつの教育活動には,それぞれの教育的意義及び目的/目標とされる効果等があります。しかし,遺憾ながら,それらの意義や教育効果の目標化などは,日々の教育実践の中で忘れられがちです。

そこで,具体的な教育場面を取り上げ,種々の教育活動の根底にある教育的意義や目標化されるべき教育効果などを再確認するため(下位目的),本カテゴリーに当塾の塾長による教育実践に根付いたショートブログを書き下ろすことにいたしました。その上位目的は,次のとおりです。

〈乳幼児・児童・生徒の未来に羽搏く成長〉に資する教育実践の創造

日々の真摯な教育実践の参考としていただければ幸甚です。また,教員採用候補者選考の「場面指導」にもお役立てください。

本ブログは「〈言語(運用)能力〉の育成を主眼にした朝の一斉読書!!」と題するブログの第1章に当たります。今後,第6章+αまでを綴る予定です。主に,「朝の一斉読書―〈読み〉―言語(運用)能力等の育成」について,その連関性に着眼しながら語ります。その間,教員採用候補者選考の受験主体向けの「読むこと」に関する情報提供も簡潔に行います。

章構成は次のとおりです。
なお,第2章以下全て仮題です。

 

  1. 第1章 ホストの夜な夜な大事件―The host’s nightly big incident ―(本ブログ)
  2. 第2章 朝読書ーReading effect
  3. 第3章 The 読書ーCrisis!!
  4. 第4章 読書指導の意義と現状の課題に対する改善策―SUMMARY
  5. 第5章 〈言語(運用)能力〉の育成ーUrgent problem
  6. 第6章 家読―Home reading
  7. 〔付記〕電子書籍の活用
  8. 参考文献・資料等

本ブログにおいては,本ブログ作成の趣旨から国語教育の範疇にある〈読み〉について深入りは致しません。ただし,朝の一斉読書を考える上において,それは非常に大切なポイントであることに相違ありません。「読者反応理論(読者論)/読書行為論」など〈読み〉に関する論争を踏まえるとき,決して看過できる事柄ではないのです。仮に,「朝の一斉読書は〈読みの世界〉とは次元を異にする,そうした趣旨の取り組み(学校での実践)ではない。」とする主張があるとするならば,朝の一斉読書においても読書行為が対象となる限り,その枠組みからは解放されず,そのような主張は自己にパラドックスを内包し,破綻を来していると述べざるを得ません。

作品には〈命〉があります。その〈命〉を探し求める〈旅〉が〈読むという行為〉です。その〈旅〉の過程で読みの主体は〈自己内対話〉や外在する他者との〈対話〉を営みます。つまり,「書くこと」「話すこと」「聞くこと」をも総合することにより,各読みの主体の〈読み〉は《読み》へと変貌します(=教育活動では,このような営みを学習主体が行うように教授者が仕掛けるのです)。結果,〈相対化能力〉,創造力,想像力,思考力・判断力・表現力など,総じて言語(運用)能力は高まり,感性・情緒は豊かになるものと考えられます。こうした思考は筆者独自のものではありますが,こうした考え方が成立するならば,朝の一斉読書を現状の趣旨からではなく,〈新しい時代〉を生きるための資質・能力を育成するため,新たな角度から再検討する必要があると思うのです。

第1章 ホストの夜な夜な大事件―The host’s nightly big incident ―

平成5年9月21日,当時,28歳だった筆者は,(当時)文部省若手教員海外派遣団カナダチームの一員として,全国から集結した23名の新進気鋭の先生方と共に渡加。サバイバル(survival)を基調とした教員・語学研修とSchool board[1]カナダでは州単位でSchool Boardが存立しています。各州の教育を司る教育委員会のようなものです。を初めとする各種教育機関等への表敬訪問(視察)及び配属校での勤務の旅に出立したのであった。

2週間に及ぶ過酷な語学研修の後,筆者が単身で赴任した街はバンクーバー(Vancouver)から車で45分の長閑なLangley(British Columbia州)であり,配属校は耳にするだけで蕁麻疹が出そうな[2]詳しくは「塾長のカナダ武勇伝(?)―その2 語学研修Ⅰ-」(小桝雅典,BLOG「鍛地頭-tanjito-」,2018.2.24)をお読みください。「Walnut Grove Secondary School」(Langley School District(ラングレー教育学区))[3]現在の日本の公立中高一貫校に当たる学校で,当時約1,200人程度の中高生が在籍していました。だった。

【こちらの当塾オリジナルジャンル「教育コメディー」も楽しめますよ!!】

塾長のカナダ武勇伝(?)―その1 プロローグ―

うちの塾長って,ああ見えて,ちょろっと,カナダで教鞭を執ったことがあるそうです。 というわけで,今日から,気が向いたらですけど(笑),「塾長のカナダ武勇伝(?)」と題して,塾長のカナダでの教育活動とそのときの述懐をシリーズ物でつぶやいてみようかと思います。 果たして,どんな展開を迎えることやら・・・

塾長のカナダ武勇伝(?)―その2 語学研修Ⅰ-

今日のブログは,【塾長のカナダ武勇伝(?)―その1―】のつづきです。あの塾長にも苦手があったとは…しかも,塾長の赴任地に…ブリティッシュコロンビア(British Columbia)州のスクールボード(教育委員会)を挙げて実施される語学研修の初日に,そのドタバタはすでに始まったのでした…(副塾長)

塾長のカナダ武勇伝(?)―その3 語学研修Ⅱ―

語学研修の第2弾!! いよいよ研修の全貌が明らかになります。我らが塾長にとっては,まさに「Survival」そのものの研修。塾長の運命やいかに…

塾長のカナダ武勇伝(?)―その4 語学研修Ⅲ-

語学研修の第3弾!! 明日からのダイナミックな語学研修を前に,カニのようにブツブツと「Survival」を唱え続ける塾長。 そこは,バンクーバー島ビクトリアの海が見える白いレストランでした…。

塾長のカナダ武勇伝(?)―その5 語学研修Ⅳ―
あの白いおしゃれなレストランで素敵な老紳士と邂逅する我らが塾長。その老紳士は,ドイツ人医師であった。ある人生の目的を持って,配偶者と共にカナダ旅行にやって来たと言う。学生時代に起きたトラブルでドイツ人にややトラウマを持っていた塾長は,老紳士との出会いを契機に,その出来事を回想するようになる。
バンフの街を見下ろすロッキーの山々

ホームステイ先のホストファミリーには恵まれた。当時29歳でトム・クルーズ(Tom Cruise)似のAと27歳で故ダイアナ妃に瓜二つのB(teacher)は献身的に筆者のお世話をしてくれた。若く溌溂としたホストの美男美女カップル(夫婦)が精力的に連れ出してくれたある週末のハイキングを一生忘れることはない。目的地は標高2,000mに近い峻嶽だった。「週末のリラックスのため,ハイキングをする」とは聞いていたが,山の麓に着くまで,この山を登ることが「ハイキング」であるとは思ってもみなかった。日本において「ハイキング」とは自然に触れ,楽しみながら歩く・・・・・・・・ことを言う。配属校の教員や高校生たちも数名いた。その嶮山を暁方から日暮れまで自力で登/下山した。死ぬかと思った。雲を見下ろす眺望は途轍もなく美しいものだったのだろう。だが,全く記憶にない。頂上に達した時点で,下山することしか考えていなかったからだ。数時間前の目に照り映えた日の出は覚えている。難所に差し掛かるちょっと前で,まだ元気だったからだ。そのお日様が既に午後の日差しを漲らせていた。体力はほぼ枯渇していた。しかし,ホストと共に,満身創痍で命からがら,麓の小さな街に下り立つことができた。疾うに下山していた教員や生徒たち,さらに街の数々のレストランやバーで飲食・飲酒していた全く見知らぬカナダ人までもが総出で迎えてくれた。ネオンに映し出された彼ら/彼女らが大きな歓声を上げるのが薄暗からでも分かった。割れんばかりの拍手喝采だった。一斉に駆け寄ってくれた彼ら/彼女らが筆者を取り囲んだ時には,腰を丸め,両脚を引き摺りながら,うるうるの眼差しで,思わず「生きているぞ~!」とガッツポーズで叫んでしまった。無論,日本語で叫んだ。案の定,みんなで「遭難したのではないか?」と話し合っていたらしい。もう少し下山が遅れていたら,レスキュー隊が出動する騒ぎになっていた。これは実話である。

草場に座って考え事をする男性の影

BはWalnut Grove Secondary School の教員で中学1年生の担任だった。そのクラスにアシスタントティーチャーが常駐していた。教員の1,2軍制である。当然,給料に多寡がある。当時,1軍のティーチャーでも日本の教員の給料より安かった。アシスタントティーチャーからは「カナダでは公立学校の教員でもクビになる。」ことを教わった。授業が下手であったり,やんちゃな児童生徒が集まる授業が成立しなかったりしたら,お払い箱になるらしい。校長から自宅に入電し,いきなり食えなくなるのだ。次の学校を探す羽目になる。Walnut Grove Secondary schoolでは,生徒指導を4人の教頭(vice principle)が一手に引き受けていたから,どの教員も授業づくりに躍起になっていた。教特法(教育公務員特例法)で守られている(≒簡単にクビにならない)日本とは異なる光景がそこにはあった。

机上にノート型パソコン,コーヒーカップ,システム手帳が置いてあるランプの灯る夜のデスク

ある日のことだ。午前3時を過ぎていた。物音に気付いて筆者は目を覚ました。2頭の飼い犬が激しく吠えた。2日前の深夜,筆者が宛がわれていた2階の部屋のベランダで佇んでいた見知らぬ男の影が脳裏を過った。筆者は跳ね起きた。だが,犯人はBだった。それはすぐにわかった。なぜならば,Bの部屋の明かりが灯ったからだ。それでも変わったことがあってはならないと思い,彼女の部屋に駆けつけた。ドアは開け放たれていた。慌てて彼女が部屋に入った証拠だ。訝しく思った。しかし,部屋の奥を覗くまでもなかった。机に着いた彼女が長い背を丸め,懸命にパソコンに向かっている後ろ姿とキーボードを連打するけたたましい音とが筆者の耳目に同時に飛び込んできたのだ。

教室で同じ辞典を肩を並べて読んでいる外国人の男の子と女の子

「Hi, B,何をやってんの?」
Bの背後からひそひそ声で語り掛けてみた。
「ヒエ~!! Oh…Masanori…驚いちゃうじゃない。 でも,ちょうど良いわ! ねえねえ,ちょっと画面を見て。」
一瞥で学習指導案であることがわかった。
「今,夢を見たの。それを忘れないうちに記録しているのよ。Masanori,読める?」
筆者の英語能力を,Bは日頃から熟知していた。
「………💦」
「これは(日本で言うところの)総合的な探究の時間の学習指導案なの。私が担当で中学1年生の単元を構想しているのよ。ああ,舞台は中世のヨーロッパ社会ね。法律・制度,教育,経済・商業,医学,科学・技術,芸術・美術・文学,服飾,食などの領域を生徒たちがそれぞれグループで分担してね,話し合ってテーマをつくり,それについて考え,調べ,発表するの。学園祭のときにね,みんなで中世社会で着た衣裳を纏って,先生や会場にお越しの保護者と中世のお料理を食すのよ。パーティーね。それらも全て生徒たちがつくるの。でも,つくることが主目的ではないわ。知恵を出し合って,テーマを捻出したり,そのためにたくさんの資料や文献を読んだり。考えること,調べること,表現することがホントウに楽しいんだって思って欲しいの。それに資料や本を読む楽しさを味わって欲しいのね。…そうかあ…学園祭の時にMasanoriはもういないわよね…オタワ[4]Ottawa:カナダの首都,Ontario州東部 にいるんだっけ?…残念ね…明朝までにこの学習指導案を仕上げて,ああ,素案だけど,明日の1時間目に学校司書と打ち合わせをするのよ。彼女がこうした時間のコーディネートをしてくれるの。資料や文献が学校図書館に蔵書としてあるかどうかとか,生徒がインターネット検索するから,彼女が事前にネット検索をして予習してくれるとか。そうした情報を私や他の先生方に提供してくれるし,勿論,私も調べるわ,そうした膨大な情報を持って学習指導案に対してのアドバイスもくれるのよ。… Masanori ,ごめんなさいね,夜が明けるまでに時間がないわ。私はこのまま学習指導案をつくるから,Masanoriはゆっくりとやすんでね。出勤が普段より早くなるわよ。[5]筆者は,毎日,Bの運転する車に同乗させてもらい,出勤していたのです。

画像はイメージです。

パソコンを操作しながら着席した男子児童に教える外国人の女性教師。教師の隣にはスケッチブックの上に頬杖を付いた,学習意欲を喪失した女子児童。

Bの説明を聴きながら,筆者の脳裡には,先日,表敬訪問(視察)を行ったある小学校の学校図書館が思い起こされていた。始業のチャイムを図書館内の椅子に腰掛けて待つ小学1年生たち。チャイムが鳴るや否や,我先に十数台のパソコンのうち1台を占有しようと駆け出す。まるで椅子取りゲームだ。児童の人数分のパソコンはなかったが,1台に数人が群がり順番に学習課題に対する情報検索を行ったり,文献検索を行ったり。また,画面を見て教え合ったり。何せどの児童もマウスの扱いやクリック捌きが素早くてお見事だった。一方では,パソコンから情報を得た児童たちがあちこちの書架の前で図書を選定したり,立ち読みしたり。その児童たちが引っ切り無しに押し寄せて来るのを毅然とした態度で,しかも,丁寧に常ににこやかに,かつ,手際よくレファレンス(reference)する学校司書の姿は忘れようにも忘れられなかった。

画像はイメージです。

全参加国・地域(72か国・地域)における比較 出典:「OECD生徒の学習到達度調査(PISA2015)のポイント」

「(本来,勝ち負けが問題ではないが,正直なところ,これらの光景を目の当たりにして,)いずれ日本の教育はカナダに負ける。」と思った。というのも,カナダではいろいろな場所で,大学教員を含め,様々な校種の教員たちと出逢ったが,いつも彼ら/彼女らが発する同じ言葉を聞かされていたからである。

「なぜ(当時の)日本は一斉授業で,世界トップクラスの成績を収めることができるのか? その理由を教えて欲しい。(=我々はコース制,選択制の授業でがんばっているのに。こうした個に応じた学習指導の方が成果が上がるはずなのに。)
「我々カナダの教員は,教育技術の点においては日本の教員に絶対負けない。」

実際のところ,「OECD生徒の学習到達度調査(PISA2015)」[6]日本では「国際学力調査」とも呼びます。「国際教育到達度評価学会(IEA:The International Association for the Evaluation of Educational … Continue readingでカナダは「読解力」においては日本を上回っている。

画像:全参加国・地域(72か国・地域)における比較」 出典:「OECD生徒の学習到達度調査(PISA2015)のポイント」(国立教育政策研究所)[7]註:令和2(2020)年11月29日現在,サーバーが見つかりません。

赤色のアンダーライン及び囲みは筆者による。

夕暮れが迫り明かりが灯るバンフの街
canada(提供 photoAC)
註:「ハイキング」から満身創痍で下山した際,出くわした街の光景に似ている。

その日以来,Bは夜な夜なはっと目覚めてはパソコンに向かうようになった。翌日,学校司書たちと繰り返されるミーティングを行うためだ。身体を壊しては元も子もない話だ。だが,授業創造の熱意には感服した。それは決してクビになるだけが理由ではない。その左證はBの口癖にあった。

「生徒たちに世界に通ずる力を付けてあげたいの。」

26年前の話である。

【第1章 完】

価値の高そうな蔵書を多数並べた書架を持つ落ち着きのある図書室
落ち着きのある図書室(提供 photoAC)

© 2019 「鍛地頭-tanjito-」


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