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教員養成私塾「鍛地頭-tanjito-」vol.19 「みんな仲良し」/「遅刻と〈思いやり〉」

夕暮れのまだ青味の残る空を背景に浮き上がる金色のトロントの街 一般ブログ教材
カナダのトロントの夜景(提供 photoAC)
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パターナリズムとノーマライゼーション

2020年「鍛地頭-tanjito-」が開講する「場面指導Weekly解説ルーム」のコマーシャル用フライヤー(教材紹介編)
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 1 プロローグ

先日,受講者や塾生の皆さんとビデオ通話を介して「「鍛地頭-tanjito-」カフェバー(以下,「鍛カフェ」と表記)」を催した。ソフト/アルコールドリンクやお菓子/おつまみを各自が用意し集う(教育的)井戸端会議である。その中である話題が盛り上がった。塾生がご用意くださった話題だった。

「「みんな仲良しがよい。」とする風潮に疑問を感じる。」という保護者からのお話を伺いました。その方々は「馬が合わない人がいるのは当然のことで,そこをうまく付き合うスキルを付けさせたい。」とおっしゃいます。この件について,皆さんはどのようにお考えになりますか?

昨今のSNSでの誹謗中傷や炎上が上記引用の「保護者」の言述を引き出したらしい。

「これは危ない!! 多様性を孕んだ大きな問題だ。」
「「みんな仲良しがよい。」とする風潮」の態様は?」
「「うまく付き合う」とは?」
「この場合の「スキル」とは?」

筆者の瞬間的な脳内反応である。「危ない」の内実は一様ではない。多様である。多様であるのは上記引用の「 」内の言述の組み合わせが複線的なコンテクストを形成しているからだ。それらの前後のコンテクストがもう少し詳細に分かれば,まだ言述の組み合わせによって醸成される〈言説〉を読解できるのかもしれない。しかし,筆者はそれらの前後のコンテクストについて聞き出すまいと,これまた反射的に思った。種々のコンテクストから多様な考えを引き出し,鍛カフェを盛り上げた方が集うメンバーに複数視点(考えるチャンネル)を形成する好機になるからだ。

ところが,残念なことに,鍛カフェは議論中に閉店時間を迎え,この話題は次回へと持ち越しになった。

さて,読者の皆様はこの話題をどのようにお考えだろうか?

本日はこの話題を一手法として・・・・・・「特別の教科 道徳」及び「特別活動」と連関付け,「教採アラカルト」のコーナーで簡単に採り上げてみたいと思う。

2020年「鍛地頭-tanjito-」が開講する「場面指導Weekly解説ルーム」のコマーシャル用フライヤー(講座のメリット編)
場面指導Weekly解説ルーム’20

 2 教採アラカルト(道徳・特別活動等)

(1) 出題

問 「みんな仲良しがよい。」についてあなたはどのように考えますか?

(2) ミニ解説・塾長の述懐・関係資料

まず,教育公務員が繙かなければならないものは学習指導要領及びその解説である。

次に「特別の教科 道徳」及び「特別活動」の領野から出題に対する解答を考える上で参考になる箇所を一部引用しておく。

ア 『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 特別の教科 道徳編』(文部科学省,平成29年7月)

■ 第3学年及び第4学年
 この段階においては,特に他者に対してうそを言ったりごまかしをしたりしないことに加えて,そのことが自分自身をも偽ることにつながることに気付かせることが求められる。その上で,正直であることの快適さを自覚できるようにすることが大切である。さらに,過ちを犯したときには素直に反省し,そのことを正直に伝えるなどして改めようとする気持ちを育むことも求められる。このことは,たとえ仲の良い仲間集団の中にあっても,周囲に安易に流されない強い心を養う要ともなる。
 指導に当たっては,正直であるからこそ,明るい心で伸び伸びとした生活が実現できることを理解し,この段階の活動的な特徴を生かしながら,児童それぞれが元気よく生活できるようにしていくことが望まれる。

第3章 道徳科の内容,第2節 内容項目の指導の観点,A 主として自分自身に関すること,2 正直,誠実,(2) 指導の要点,p.31

■ 第3学年及び第4学年
 (前略)
 指導に当たっては,この段階の児童が気の合う友達同士で仲間集団をつくる傾向が見られるため,誰に対しても真心をもって接する態度を育てるようにすることが特に重要である。人に頼むときや失敗して謝るときなど人との関わりを通して,真心は相手に態度で示すことができることに気付かせることもできる。(後略)

第3章 道徳科の内容,第2節 内容項目の指導の観点,B 主として人との関わりに関すること,,9 礼儀,(2) 指導の要点,p.45

■ 第3学年及び第4学年
 この段階においては,誰に対しても分け隔てをしないで接することの大切さを理解できるようになる。しかし,ともすると自分の仲間を優先することに終始して,自分の好みで相手に対して不公平な態度で接してしまうことも少なくない。
 指導に当たっては,不公平な態度が周囲に与える影響を考えさせるとともに,そのことが人間関係や集団生活に支障を来たしいじめなどにつながることを理解させることが求められる。誰に対しても分け隔てをせず,公正,公平な態度で接することができるようにすることが重要である。

第3章 道徳科の内容,第2節 内容項目の指導の観点,C 主として集団や社会との関わりに関すること,13 公正,公平,社会正義,(2) 指導の要点,p.53

イ 『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 特別活動編』(文部科学省,平成29年7月)

○ 特別活動の深い学びとして,児童生徒が集団や社会の形成者としての見方・考え方を働かせ,様々な集団活動に自主的,実践的に取り組む中で,互いのよさや個性,多様な考えを認め合い,等しく合意形成に関わり役割を担うようにすることを重視することとした。

第1章 総説,2 特別活動改訂の趣旨及び要点,(2) 改訂の要点,④ 学習指導の改善・充実,p.10

(2) 集団や自己の生活,人間関係の課題を見いだし,解決するために話し合い,合意形成を図ったり,意思決定したりすることができるようにする。

第2章 特別活動の目標,第1節 特別活動の目標,p.10

 学級活動は,学校生活において最も身近で基礎的な所属集団である学級を基盤とした活動である。学級は,年間を通して日々の生活を共にする集団である。卒業後においては,職業生活の中心となる職場における集団や,日々の生活の基盤となる家族といった集団での生活につながる活動である。
 日々の生活を共にする中で,児童は多様な考え方や感じ方があることを知り,時には葛藤や対立を経験することもある。こうした中で,より豊かで規律ある生活を送るために,様々な課題の解決方法を話し合い,合意形成を図って決まったことに対して協力して実践したり,意思決定したことを努力して実践したりする。

第2章 特別活動の目標,第1節 特別活動の目標,1 特別活動の目標,(3) 様々な集団活動に自主的,実践的に取り組み,互いのよさや可能性を発揮しながら集団や自己の生活上の課題を解決する,① 様々な集団活動,p.14

『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 特別活動編』(文部科学省,平成29年7月)で「合意形成」は111か所に亘って表出する。デジタル版の当該の解説で「合意形成」を検索し,ヒットした周辺を一読しておかれると良い。

ウ 塾長の述懐

本出題を考究するには,ヘーゲルの人倫(=個別的自由と社会的自由との止揚(aufheben)),フーコーの脱中心化,フッサールの間主観性,超越論的主観性,確信の構造,信憑及び一定の公理並びにハイデガーの世人,実存,開存,頽落,気遣い,良心等の思想を援用すると良いだろう。特に,現象学が示唆する〈真理〉概念が参考になると考えられる。

さらに,脳科学者・認知科学者・評論家である中野信子氏の「正義中毒」[1]『人は,なぜ他人を許せないのか?』(アスコム,2020.1)論もおもしろい。

だが,(教員は)教育公務員であることを忘れてはならない。

そして,当塾は本出題に対する解答の鍵に,上述の思想を援用し創造した,当塾が述べる〈対話〉・〈対話術〉を据えるのである。

👆 〈対話〉・〈対話術〉をご理解いただく上で,「「面接についての考え方」について」(Ⅱ-1)をお読みください。👆

その〈対話〉・〈対話術〉とは?

実はそれらは主に当塾の「オンライン面接試験対策講座」を初めとする面接指導の基盤を成している。〈ありのままの児童生徒〉に近接する(〈ほんとうの児童生徒理解〉の)ためにも,学級(ホームルーム)経営のためにも,将又,言語活動などのためにも,そして教員自らを〈相対化〉するためにも有益である。

 3点目に,「教育時事情報について個人で考え,他者の意見を聴き,内容を深く捉えることができる」ことです。
 オンラインを活用して,塾長が毎日ピックアップしてくださった教育時事情報を得ることができます。そうした情報に対して,副塾長からは保護者の立場からの考えをいただけます。徹底した塾長・副塾長との「対話」により,自らの思考を深めていくことができるのです。

「プレ塾生合格体験記」,第1期塾生K様,BLOG「鍛地頭-tanjito-」,2019.09.10,下線は筆者が施した。以下同様。)

今までは,
「子どもに○○の力を身につけさせるために,【私が】◎◎の手立てで,子どもを変える」という意識が強くありました。

『子どもありき』

あ,そうか。『子ども主体』の教育を僕はしたいんだ。

ほんのちょっとのちがいなのですが,
コロンブスの卵のような
パラダイムシフトが
起こった
ような感覚がしました。

「【受講者様のご感想】コロンブスの卵のようなパラダイムシフト」(第2期塾生F様,BLOG「鍛地頭-tanjito-」,2019.09.06)

自分の軸を見定めることからでしたので,面接時の発言でも発言内容に筋が通るようになったことが印象的でした。

「【受講者様のご感想】〈オリジナリティー〉に溢れた無類の〈対話術〉」,受講者I様,BLOG「鍛地頭-tanjito-」,2019.09.07)

下線部には当塾の〈対話術〉による〈対話〉によって塾生や受講者に自己の〈相対化〉が起こり,〈ありのままの自己〉に近接を図った結果が言述されている。

自己の〈相対化〉

それは本出題の解答を考究する上での基本となる第1ステージと述べて過言ではない。その上で,「パターナリズム/ノーマライゼーション」についても思考を進め・深める。

以上,本出題の解答作成に向けて,その一部の思考過程を略述してみた。それだけでも〈規模〉が大きい出題であることがわかるだろう。


ここでは,教員採用候補者選考(以下,「教採」と表記)に向けての学習(対策)の一端をご紹介した。他者を教え導き,他者と共に学び,〈共創造(co-creation)〉などする職種の教員になるならば,せめてこれくらいの準備をして教採に臨んで欲しい。

まずは,乳幼児・児童・生徒のために。
そして,あなたのために。

 3 場面指導等

出 題

問 授業中に遅刻して教室に入ってきた児童生徒Aがいました。Aは何も言わず,自席に着こうとしています。あなたはどのように指導しますか?

塾長の述懐

前回のブログ教材と同様,本出題を「場面指導Weekly解説ルーム’20」で扱う際の当塾のシナリオ(一部,項目のみ)を紹介しますので,そのシナリオ中の項目を本出題に答えるための観点として捉え,解答を紡ぎ出してみてください。

シナリオ
  1. カナダの中高一貫校に勤務した際に経験した4人の教頭による遅刻指導(塾長の実践談)
  2. 「時間」とは何か?
  3. 学習指導要領と「時間」
  4. 遅刻に係る指導
    • □ 「連絡のない欠席,遅刻及び早退ー問題行動・児童虐待等」間の連関性
    • □ 「遅刻ー懲戒/体罰」間の連関性
    • □ 事前→事中→事後の系統性・計画性を持った継続的な指導が大切!!(塾長の実践談)
      • ○ 「事前」の指導とは
      • ○ 「事中」の指導とは
      • ○ 「事後」の指導とは
    • □ 端から決めつけるな!!―事実確認と毅然とした指導と〈思いやり〉ー(塾長の実践談)
    • □ 学習意欲を喚起する生徒指導の三機能を生かした授業づくり
    • □ 全体指導と個別指導との均衡バランス
    • □ 遅刻と校則,そして指導の質的差異
    • □ 登校(校門)指導の目的と方法等
    • □ 家庭・地域との連携
  5. 教員が範を示せ!!
    • □ 教員の遅刻と理由説明,そして誠意のある謝罪(塾長の実践談)
    • □ 教員が理由なき遅刻を繰り返してどうする気だ!!         など

出題に対するご質問,ご意見,正解及び解説等に係る照会については受け付けておりません。予めご諒解ください。

© 2020 「鍛地頭-tanjito-」


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