テーマ
脱偏差値時代の〈進路指導〉
スクールコンプライアンス演習
出題
問 次の文章は中学校及び高等学校学習指導要領からキャリア教育と進路指導についての記述を引用したものである。空欄A~Eに適語を補いなさい。
生徒が,学ぶことと自己の( A )とのつながりを見通しながら,社会的・( B )的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を身に付けていくことができるよう,( C )を要としつつ各教科〔・科目〕等の特質に応じて,キャリア教育の充実を図ること。その中で,生徒が自らの〔在り方〕生き方を考え( D )に進路を選択することができるよう,学校の教育活動全体を通じ,組織的かつ( E )的な進路指導を行うこと。
注:〔 〕内は高等学校。
ミニ解説
定義・概念としてはキャリア教育と進路指導との間に大きな差異は見られません。そうであるならば,当然,進路指導も学習指導要領との連関を抜きにして語ることはできません。(「時代背景-学力の3層構造-第3期教育振興基本計画-社会に開かれた教育課程-カリキュラム・マネジメント-キャリア教育」などの連関を想起しましょう。)
因みに,問題のリード文に「小学校がない。キャリア教育と進路指導は小学校に関係はないよね。」と思われた方はいらっしゃらないと拝察します。キャリア教育のスパーンをご存知でしょうから。
児童が,学ぶことと自己の将来とのつながりを見通しながら,社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を身に付けていくことができるよう,特別活動を要としつつ各教科等の特質に応じて,キャリア教育の充実を図ること。
『小学校学習指導要領(平成29年告示)』(文部科学省,第1章 総則,第4 児童の発達の支援,1 児童の発達を支える指導の充実,(3),pp.23-24」)
場面指導等
出題
問 中学校(もしくは,高等学校)最終学年の生徒が年度当初,「私は有名校に進学したいとは決して思いません。ただ進学先については迷っています。それなのに,親はどうしても有名校に進学しなさいと言い張ります。私はどうしたら良いですか?」と担任のあなたに相談してきました。あなたはどのように指導しますか?
ミニ解説・塾長の述懐
ポイントは大別して3点あります。
1 自己指導能力の育成
2 保護者への丁寧で粘り強い説明
3 ?
「1」は当該の生徒を初めとする全生徒を対象とした適正な進路指導の在り方にかかわります。また,「2」は保護者に「1」に付随する適正な進路選択の在り方を理解していただくことが目的となります。
そして,「3」は…?
今回の出題は現代という時代にあって大変な難題です。なぜならば,問題の根底には大衆のエゴイズム(egoism)に根付く強靭な偏差値言説が瀰漫しているからです。この言説の権威性から解放されない限り,学習指導要領の記述も絵にかいた牡丹餅に過ぎません。偏差値言説が強度の〈相対化〉を受け,大衆がその呪縛から解放されたときに初めて脱偏差値時代の新たな〈進路指導〉が始まるのです。そのために,教職員にまず求められるものは,社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を児童生徒に身に付けさせる自己の〈相対化能力〉に他なりません。
© 2020 「鍛地頭-tanjito-」