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「学級通信」であなたの協働性・組織性がわかる!!
プロローグ
[場面指導の意義考2]
「一つの事象に対して,その事実や現象を捉えてゆく際に,対象となる事象が複雑な様相を呈するものであればあるほど,それを捉える様々な「視点」の介在が可能となり,事象を一律に限定して把握することは困難になってくる。すなわち,こうした「視点」は,個々人のものの見方や考え方を反映した思考性や価値観を示すものであって,多種多様な「視点」が生起するのは当然のことであり,だからこそ,各「視点」間において虚虚実実の対話が営まれることになるのである。そして,その結果,個々人は他者の「視点」を,あるいは自己の「視点」を「対象化・相対化」することになる。これは,延いては,個々人にとっての認識変容・見識拡大の契機でもある。」[1] … Continue reading
一つの教育事象は複雑化・多様化・難化した要素がモザイク状に絡み合った複合的な多面体である。したがって,当該の教育事象をありのままにシステム思考で捉えるためには,尚更,「多面的・多角的な視点」が必要となる。したがって,現代の,そして,これからの教職員に求められているものの一つが「多面的・多角的な視点」であり,学び続けることによって獲得され続けなければならないものである。
深い学びの鍵として「見方・考え方」を働かせることが重要になること。各教科等の「見方・考え方」は,「どのような視点で物事を捉え,どのような考え方で思考していくのか」というその教科等ならではの物事を捉える視点や考え方である。各教科等を学ぶ本質的な意義の中核をなすものであり,教科等の学習と社会をつなぐものであることから,生徒が学習や人生において「見方・考え方」を自在に働かせることができるようにすることにこそ,教師の専門性が発揮されることが求められること。
『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 国語編』(文部科学省,第1章 総説,第1節 改訂の経緯及び基本方針,2 改訂の基本方針,(3) 「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善の推進,④,平成30年7月,p.4,下線は筆者による。)
緑色の下線部は「生徒」を「教員」に置換して読み替えることができる。なぜならば,「「見方・考え方」を自在に働かせることができ」ない教員が生徒の「学習や人生において「見方・考え方」を自在に働かせることができるようにすること」はできないからだ。
つまり,教員採用候補者選考(以下,「教採」と表記)の受験主体を含め,特にこれからの教育を担うであろう教員には「多面的・多角的な視点」の獲得,またそうした営為の継続が必須であると言える。
だから,教採で「場面指導」の出題があると言って過言ではない。複雑化・多様化・難化した教育事象,すなわち「場面」を如何なる角度からアプローチしてくるのか? 一つの視点のみでアプローチしてくるのか,多様な視点をもってアプローチしてくるのか? 正確で多様な視点からのアプローチが多面的で的確な人間(児童生徒)理解を可能とすることだけを勘案しても,後者に教員としての資質・能力の高さを見るのは当たり前の話である。
「複雑化・多様化・難化した教育事象を現場経験のない/乏しい学生が読み解くことはムリ!」と単視点で決めつけ,「場面指導」を捉えるようでは教員としての資質・能力が疑われる。では,なぜ学生をも受験の対象とする教採で全国的に「場面指導」が出題されるのか?
当塾の「とことんダイアログアセンブリー」にせよ,Openchatにせよ,学生だけではなく,学校現場の経験者も集うことの目的の一つはインタラクティブな「多面的・多角的な視点」の獲得にあり,トークテーマを組織的に解決しようとする協働性の涵養にある。延いては,それが集団討論,グループワーク等の練習(一部)を兼ねるのだ。
教採では「多面的・多角的な視点」も見られているのだろう。その視点に基づき,脳裡の引き出しから教育事象に係る課題解決のための知識を如何に正確,かつ,迅速に引き出し,それらを統合してどのように表現できるかも見られているのだろう。
そうした受験主体を選別する面接官の視点があるのならば,その先には「即戦力・実践力」なるメルクマールがあるように思える。
「1+1=2」式だけの偏差値教育の弊害と思える単視点(≒正解至上主義)で教員ができる時代ではない。
スクールコンプライアンス演習
出題
問 学級通信(学級だより)に関する次の文のうち,正しいものを選びなさい。
- 学校・学級等の教育目標,学校・学級運営等の方針,学級内における児童生徒の学習や生活状況等及び教員の思い等を掲載して,学校や学級の状況を知らせる。
- 保護者の関心を喚起するため,保護者の意見や質問を採り入れるとともに,保護者の持ち回りで学級通信を作成してもらう方が効果的である。
- 学校・学級等の教育目標に拘る必要はなく,教師の思いや願いを自由に述べるためのものである。
- 発行に際して,事前に周囲の教員に読んでおいてもらえば,校長の許可は必要ない。
- 学級通信は学校の発行物なので,著作権に関して著作権者等の許諾を得る必要はない。
ミニ解説
「高が学級通信(学級だより,ホームルーム通信,以下「学級通信」と表記)の出題か!」と思われた方はおられませんよね。本出題は保護者連携や教員としての組織性に係る資質・能力にもかかわっています。
場面指導等
出題
担任する児童生徒の保護者から,学級通信について次のような苦情がありました。
「先生が熱心に学級通信をつくっておられることは解ります。しかし,内容が恣意的で,時折,学級のこどもたちのことを悪く書かれているように読めます。」
このような苦情を受けないようにするために,あなたはどうしますか?
また,こうした苦情を受けた場合,あなたはどうしますか?
ミニ解説
「学級通信」を読めば,凡そ当該の担任等の学級(ホームルーム)経営の在り方が解ります。児童生徒の理解度,保護者との関係の具合,法規法令に関する知識及び組織を意識した仕事の在り方(か否か),そして教育愛など。
© 2020 「鍛地頭-tanjito-」
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