テーマ
児童生徒を組織で指導する!!
プロローグ
コロナ禍でますます「未来の社会は予測不能である」との思いを深めています。
AI時代を迎える社会には〈共創造(co-creation)〉が必要であり,そういう意味で〈組織性〉が不可欠なのですが,―だから,中教審もこれからの〈新しい時代〉の〈新しい教育〉を担う教員に「協働性」・「組織性」を求めているのでしょうね。―その〈組織〉を如何に経営するのでしょうか?
PDCAでは急速な時流に(その回転が)追い付かないでしょうし,コロナ感染のような突発性の高い出来事には過去のデータがない分お手上げになるのでしょうね。特に学校教育(組織)においては,サイクルのように見えて丈の短い直線的な思考性で稼働している/させている手順重視の〔サイクル〕だから時代の激流に飲み込まれて構成員の思考停止をさらに生みそうだし…。
かと言って,OODAでは単・少視点的傾向にある現況で「O(観察)」ステージの精度が保てず,未来予測が定かではないし…。
……未来の〈(学校)組織創り〉は難航を極めそうですね。
スクールコンプライアンス演習
出 題
次の守秘義務に関する文章(Ⅰ),(Ⅱ)の空欄A~Gに適語を補いなさい。
なお,(Ⅰ),(Ⅱ)の出典は次のとおりです(下線は筆者による)。
- (Ⅰ):『生徒指導提要』:文部科学省,「第6章 生徒指導の進め方」,「Ⅰ 児童生徒全体への指導」,「第3節 守秘義務と説明責任」,「2 守秘義務,「(1) 守秘義務とは」,平成22年3月,デジタル版;p.144/冊子版;p.135)
- (Ⅱ):『生徒指導提要』:文部科学省,「第5章 教育相談」,「第3節 教育相談の進め方」,「2 学級担任・ホームルーム担任が行う教育相談」,平成22年3月,デジタル版;p.111/冊子版;p.105
(Ⅰ)
公務員は秘密を守る義務を有します(( A )法第34条)。義務違反に対しては、 懲戒処分及び( B )が加えられます。この義務は( C )後も続くものです。ここでいう「秘密」とは、職務上知り得た秘密のすべてですが、たんに形式的に「マル秘」扱いされているということではなく、実質的にもそれを秘密として保護するに値すると認められることを要すると考えられています。ただし、形式的に秘密扱いされているものを漏らせば、( A )法上、秘密保持に関する( D )に違反することとなる場合があります。
(Ⅱ)
( E )やスクールカウンセリングにおいて守秘義務が問題になることがあります。大切なことは、学校における相談活動の守秘義務と病院やクリニックなど治療機関における守秘義務では一部異なる部分があるということです。
学校では一人の児童生徒に複数の教員がかかわります。それゆえ守秘義務を盾に教育的かかわりの内容や児童生徒についての( F )が閉じられてしまうと、学校としての働きかけに矛盾や混乱が生じてしまい、結果的に児童生徒やその保護者を混乱に巻き込むことになりかねません。学校における守秘義務は、情報を「( G )」という意味にとらえるべきです。
ミニ解説・塾長の述懐
学校における守秘義務の概念を整理するねらいの出題です。(Ⅰ),(Ⅱ)の文章を比較読みし,コンプライアンスのコンテクスト上に位置付けて「守秘義務」を理解するだけではなく,如何に学校の教育活動が組織性を帯びるものであるかを理解することが重要です。
次の「場面指導等」の出題を考える際,下線部を考察の対象に加えることも考えられます。
場面指導等
出 題
担任する児童生徒が担任であるあなたのところに一人でやって来ました。
周囲には誰もいません。
悩み相談でした。
当該児童生徒が最後に小さな声であなたに語り掛けました。
「先生,今,話したことを誰にも言わないでね。」
あなたはこの後どのように対応しますか?
本設題は「オープンチャット教員採用試験対策講座」で令和2(2020)年4月14日(火)に取り扱ったものを再掲しています。
ミニ解説・塾長の述懐
出題の脚注に既述したように,本設題は「オープンチャット教員採用試験対策講座」で令和2(2020)年4月14日(火)に取り扱ったものです。
教職員における不祥事の発端ともなり得る慎重で大切な内容を含むとともに,4月の「オープンチャット教員採用試験対策講座」の解説では考える視点として取り上げていなかった指摘事項もあることから再掲した次第です。
その後者について。
今回の「スクールコンプライアンス演習」の出題で引用した文章(Ⅱ)には,次の文が後置されています。
「面接の中で児童生徒から「だれにも言わないで、秘密にして」といった言葉が出たときには、まずしばらく話を聞いた上で、「この問題はどうしても他の先生方と協力して解決していく必要がある」と伝え、児童生徒の了解を得るのも一つの方法です。」(下線は筆者による。)
勿論,引用文の記述は「一つの方法」(ルビは筆者)として間違いありません。しかし,飽くまでも「児童生徒の了解を得るのも一つの方法」であって,それが全てと言述されているわけではないのです。
したがって,「児童生徒から「だれにも言わないで、秘密にして」といった言葉が出たとき」の対応の在り方は他にもあることになりますね。
では,どのような対応の在り方があるのでしょうか?
「場面指導Weekly解説ルーム」ではその辺りから思考を深めますので,受講者の皆さんはしっかりと予習をしておいてください。
「そんな難しいことは考えずに,『生徒指導提要』にある言述を丸覚えしておけばいいんだよ!」と思われる方,間違いなく教員としての資質・能力を磨くことはできませんよ。その丸覚えだけの思考性では(乳幼児・)児童・生徒に良質の教育を行うことはできないし,信頼を得ることも難しいでしょう。ただし,信頼を得ることそのものが目的でもありませんけど。
「まずは,乳幼児・児童・生徒ありき」が〈ホンモノの教員〉の条件なのです。
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