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「心のケアーコンプライアンス」連関を二項対立で考えるな!!
1 プロローグ
先日,受講者のお一人がフィールズ賞を受賞した広中平祐の『学問の発見』をお読みになったとチャットをくださった。著作への懐古的な気分を味わいたいと,早速,電子書籍を購入した。
『学問の発見 数学者が語る「考えること・学ぶこと」』(広中平祐,講談社,2018.8,Kindle版)
やはりこの言述に潜思黙想してしまう。
「創造とは,マッシュルームのようなものだ」
前掲書,第3章 逆境と人間
本文中,広中氏が挙げるボアンカレ(仏,1854~1912,物理数学者)の言葉だ。どこか脳裡の片隅に「秋の味覚」といった言表が浮沈しながら,地表下に円形に展延する菌根を想像した。この菌根は「(展延する)好条件がいつまでも続くと,根だけが発達してキノコをつくらずに,ついには老化して死んでしまう」[1]同上そうだ。
では,どうするか。発達してきた根に,ある時点で,根の生長を妨害する条件が与えられなければならないのである。
同上
このメタファーを広中氏は「創造」に当て嵌める。
創造には,まず,松茸が地表面下で根を広がらせていくような蓄積の段階がなければならない。だが,いつまでも蓄積だけを続けていては,松茸がキノコをつくらずに枯死してしまうように,人は創造することなく,生涯の幕を閉じなければならなくなってしまうのだ。
同上
つまり,「展延する菌根」(知の蓄積)がなければ「創造」はない。しかも,「知の蓄積」を広中氏は「人が親から受け継いだり,周囲の人間から学んだり,あるいは学校で勉強したりしながら自分の中に蓄積していったもの」[4]同上と述べている。二項対立に捉えたくないが,「社会知」「学校知」というところか。頭ごなしに詰め込む「知」でないことは確かだ。
「妨害条件」は「順縁」も良いが,「逆縁」が良い。エネルギー,バイタリティー,ハングリー精神などを生むからだ。
生きることは学ぶことであり,学ぶことには喜びがある。生きることは,また何かを創造していくことであり,その創造には,学びの段階では味わえない,大きな喜びがある
同上
私は無責任な読者論は嫌いである。作品にはその作品の〈命〉がある。だが,上記の引用は無理をしてでも一片のテクストとして読みたい。なぜならば,そこにはこれからの〈新しい時代〉の〈新しい教育〉を担う教員の真相があるからだ。
当塾は言及し続けている。
教員はファシリテーターではなく,クリエイターであれ。
〈共創造(co-creation)〉を介するクリエイターである。学び続けなければならない。「順縁」/「逆縁」を自覚しなければならない。また,希求しなければならない。教員として生きることは学問をすることである。学びなき教員に創造はなく,「学びの段階では味わえない,大きな喜び」もない。抑々,学ぶことが仕事の教員が学ばずして,それは教員ではない。そう考えれば,「その作品の〈命〉」の界隈ぐらいは彷徨しているのではないか。
「学びの段階では味わえない,大きな喜び」を裏打ちするものは〈教育愛〉に他ならない。
では,「学びの段階では味わえない,大きな喜び」とは何か? まず,そこから始めてみよう。
2 補助教材
出 題
保護者から次のような批判がありました。
「X先生が授業で特定政党の主張に偏った教材を使用し,一方的な主張に基づいた授業を展開している。」
この事案に関して,あなたはどのように考えますか?
ミニ解説・塾長の述懐・資料
言わずもがな,恣意的な判断で解答してはいけないわけです。〈事実〉とコンプライアンスに立脚した解答が必要です。
その点を踏まえた上で,解答のポイントを簡単に整理しておきます。
3 場面指導等
出 題
ある日の放課後,担任をしているAさんの保護者から入電しました。
「こどもが体育の授業で怪我をしたと言って帰ってきました。学校での怪我だから治療費を払っていただきます。」
あなたはどのように対応しますか?
ミニ解説・塾長の述懐・資料
本出題のポイントは,次の2点に大別できます。
「学校の保健管理及び安全管理」と概括しましたが,指導(解答)を考える際のポイント(例)は次のとおりです。
(理不尽な要求をしてくる)保護者への対応を考える際のポイント(例)は次のとおりです。
関連法令等として,次のものを押さえておく必要があります。
児童生徒間の暴力行為が生起し,被害児童生徒側が加害児童生徒側に医療費の負担を求める際,学校に仲立ちを依頼してきました。学校としてどのように対応すべきか。学校ではこうした問題も実際に起こります。
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References
本設題に係る考え方・方法等の詳細については,「場面指導Weekly解説ルーム」の中で共に考え,解説致します。