ここでは,「面接試験・小論文試験対策のためのオリジナル教材演習」の中から,教育時事情報(今回のテーマは,生徒指導分野の中から教育機会確保法など時事性の高い不登校への指導にかかわる教材)を採り上げ,ご紹介いたします。

なお,今回の教材見本は,プレ開塾中,当塾で学び,見事に広島県・広島市の教員採用試験に合格した臨時的任用教員(当塾で学ぶことで一発合格)と塾長との教材を媒介とした「対話」の有様をそのまま採録いたします。

皆様の参考となれば幸甚です。

注:実際はOneNote上で行われた「対話」です。

1 設 問

次の文章(教育時事情報)を読んで,IT機器を活用した不登校への指導について,あなたの考えを論述しなさい。(1,200字程度)

2 問題文(教育時事情報)

(省略)

3 解答文(塾生作成)

IT機器に不登校の問題の全てを解決するのは,困難である。そのため,学習面の支援と児童生徒と教職員を含む関係者とのかかわりをつくるきっかとしてITを用いることを提案する。学習面の支援について,教育機会確保法12条・13条には,学校以外における学習活動の状況等の継続的な把握と,学校以外の場における学習活動等を行う不登校児童生徒に対する支援が示されている。IT機器を活用すれば,児童生徒それぞれが集中できるタイミングで,意欲がある時に,できる課題から徐々に学習活動を取り入れることが可能である。つまり,画一的な学びが苦痛な児童生徒にとっては,心的な負荷がかからず,自分のペースで基礎学力を身に付けることができると考える。さらに,学習成果が出席日数として認められるため,不登校を「進路の問題」と捉えたときに,児童生徒の選択肢を広げることにつながると考える。

次に,教職員を含む関係者とのかかわりについてである。佐賀教育センターでは,不登校児童生徒へのIT活用の効果として,児童生徒と関係者のかかわりの糸口になることを示している。人とかかわることが少なかったり,苦手さがあったりする児童生徒の中には,言葉でのやりとりに自信の無さがある。そのような児童生徒の場合には,それぞれの児童生徒の興味関心のあるインターネットやゲームを活用することが,かかわりの糸口になると考えられている。IT機器の様々なアプリや,インターネット機能の即時性を活用して相互理解や家庭以外の場所で心許せる人とのかかわりを楽しみにするようになると考えられている。このようにIT活用が関係づくりのきっかけとなることは,「心の問題」を解決するために有効であると考える。

しかし,不登校解決の最終目標である「社会的な自立」を考えた場合,IT活用だけでは不登校問題の全てを解決できない。学校での集団生活を通して身に付く,特に「基本的な生活習慣」と「望ましい人間関係づくり」には課題があると考えられる。ITだけに頼ると,決められた時間に活動できない可能性もある。H27年度の広島県の不登校調査で不登校の要因(中学校)として「いじめを除く友人関係をめぐる問題」が約3割,「家庭に係る問題」が約4割を占めている。このことから,人間関係づくりに課題を持っている児童生徒が多いことがわかる。望ましい人間関係づくりは,学校生活,学級活動,学校行事など自主的な体験活動で,年間を通じて育まれるものであると考えるため,IT活用のみに解決の手立てを頼ってはいけない。

結論として,IT教育は,学習面の支援を通して,児童生徒の「進路」の選択肢を広げ,関係者とのかかわりの糸口となり「心の問題」を解決する助けになる効果はあると考える。一方で,「社会的な自立」を考えた場合,特に「基本的な生活習慣」,「望ましい人間関係」を身に付ける上では十分だとは言えない。(1,175字)

4 「塾生―塾長」間の「対話」(OneNote上で。一部抜粋。)

塾長:
下線部①「学校での集団生活を通して身に付く,特に「基本的な生活習慣」と「望ましい人間関係づくり」には課題があると考えられる。」について。
どのような「課題」があって,それはIT機器の何が「原因」となっているのか。その分析の過程を教えてください。

塾生:
「基本的な生活習慣」については,IT機器の活用による学習は,通学の必要がないことにより,時間の都合がつけやすいことに原因があると考えました。学校では,学習指導要領などに基づき,道徳や特別活動を初め,学校の教育活動全体を通じて,「基本的な生活習慣」の形成を図るための指導が行われています。しかし,家庭学習では,学校生活に比べると,本人の意志に委ねられているため,少なからず生活習慣の乱れにつながる可能性があると考えました。

塾長:
集団指導及び個別指導は両者大切な指導であり,また,そのバランスが大切です。ただし,集団指導に比した場合,IT機器を活用するオンライン上の個別指導には,これまであまり想定されなかったデメリットがあるとする指摘なのですね。

塾生:
はい。

塾生:
次に,「望ましい人間関係づくり」については,IT機器活用による画面上でのやり取りでは,いつでも関係を断ち切れるため,人間関係も希薄になりやすくなると考えました。学校教育では,学習指導要領(特別活動)に,集団の一員としてよりよい生活や人間関係を築こうとする自主的,実践的な態度を育てることが示されています。人間関係づくりは,集団生活を通して育まれるものであるため,IT活用での画面上の文字による対話や映像としての対話では,集団生活を通して育まれる所属感や連帯感などは十分には育まれにくいと考えました。

塾長:
価値観が多様化する現代社会にあって,多数の他者が有するものの見方や考え方を〈相対化〉し,自らのものの見方や考え方を豊かにしていくことは,現代人にとって喫緊の課題だと言えます。こうした主旨のコンテクストは学習指導要領にも見受けられるようになりました。そのためにも,自然や神仏などを含めた他者と〈対話〉を行う(=つながる)ことは極めて重要であると言えるわけです。

また,一人ひとりの人間は多面体として構成されているわけですから,他者を正確に理解するためには,他者を多角的に捉えることが必要となります。そのためにも,固定概念を払拭することによって多視点を形成する必要があるわけです。だからこそ,他者との〈対話〉は重要ですし,自己内の他者との〈対話〉は欠かせないのですね。

塾長:
続いて,下線部②「ITだけに頼ると,決められた時間に活動できない可能性もある。」について。
文意が判然としません。特に,「決められた時間に活動できない」について具体的に説明してください。

塾生:
本人の意志に委ねられているため,早寝早起き朝ご飯などを,毎日,決まった時間に行うことができないのではないのかと考えました。

塾長:
最後に,下線部③「人間関係づくりに課題を持っている生徒が多い」について。
このように断言できる理由は何ですか?

塾生:
平成27年度の広島県の不登校になったきっかけと考えられる状況の調査について,「友人関係をめぐる問題」(7.2%)が最も大きな割合を占めています。また,「家庭に係る状況」では,「親子関係をめぐる問題」(13%)が高い割合を占めているため,人間関係づくりに課題があると判断しました。

塾長:
生徒指導分野の(当塾での)既習事項を想起したわけですね。学校における生徒指導に不可欠なデータ「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(結果)」は大切な資料でした。その中で,確かに不登校の要因として「家庭に係る状況」があり,「家庭の生活環境の急激な変化,親子関係をめぐる問題,家庭内の不和等」が具体例として挙げられています。ただし,「いじめを除く友人関係をめぐる問題」は「自殺した児童生徒が置かれていた状況」に該当していませんか? 再確認してください。その上で,「人間関係づくりに課題を持っている児童生徒が多い」と断言できる理由を教えてください。

塾長:
「解答文」の三つ目のパラグラフが,あなたの解答の生命線と言えるところですね。したがって,このパラグラフの論理構造が明確で堅固な(本解答を支える)屋台骨になっていないといけないわけです。

そこで,このパラグラフの主旨を鑑みると,「IT機器を活用するだけでは,十分な人間関係形成能力を育成できない。」ということになるのでしょう。その際,「社会的な自立―基本的な生活習慣(の確立)―人間関係づくり」の3者関係が一層鮮明となるよう語る必要があったと思います。「基本的な生活習慣の確立」と「人間関係づくり」とが「社会的な自立」にどのように連関しているのかをもう少し詳しく述べる必要があったということです。

さらに,引用したデータで,児童生徒が人間関係づくりに課題を有していると断言できるか否かをよく検討した上で,こうした現状の課題をパラグラフの前半に置き,その後半において「社会的な自立―基本的な生活習慣(の確立)―人間関係づくり」の三者関係を論じることによって,IT機器の活用におけるデメリットの側面を語れば,説得力のある文章構造になったと考えられるのです。

それにしても,(当塾での)既習事項(教育機会確保法や特別活動など)を生かし,自ら進んで佐賀教育センターの研究成果を加味するなど,学習成果を発揮するとともに,学習意欲が旺盛であることに敬服いたす次第です。

注:本教材のねらいには,文章表現の確かさは含まれておりません。それは教材の属性が思考の深化にあるからです。文章表現等を含めた練習は,月1回程度で行う小論文演習等に譲っています。したがって,塾生の解答文等には,不自然な日本語の使い方が見受けられますが,ここでは添削を施しておりません。本教材は週に2回程度行うオリジナルの演習教材であり,(それでも1,200字ありますが。通常は800字程度までです。)スピーディーに,それでいて熟考しなければならない教材となっています。



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