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自閉スペクトラム症の息子のやる気を引き出すスケジュール管理

クリスタルの地球儀とカレンダー 特別支援教育(療育)
この記事は約10分で読めます。

生きる自分への自信を持たせる「鍛地頭-tanjito-」の副塾長 住本小夜子です。

今回のテーマは,【息子の(1日の)スケジュール管理】です。
朝の支度が,なかなか進まない息子。その度に試行錯誤を繰り返してきたのですが,もっと良い方法はないものかと考え込んでいました。その結果,軽度の自閉症スペクトラムである息子が,今とても夢中になって取り組み始めた方法がありましたので,経過報告ですが,それをご紹介いたします。


【ある本との出会い】

長~い夏休みを終え,小学校は前期後半が始まって1か月半が過ぎました。
(広島県東広島市の公立小学校は,前期・後期の2学期制なのです。)

先日の西日本豪雨で被災し,新居に引っ越してから,前住居で行っていた息子のスケジュール管理を,引き継げていない状態となっていました。これまで同様に,部屋の壁にスケジュール表を貼るという方法は,正直なところ,効果が低くなっていたため,何か新たに考えないといけない状況にありました。

この1日のスケジュール表を壁に貼り,そこに記載された活動(「トイレに行く」や「歯磨きをする」など)を一つひとつ熟(こな)していくという方法は,2年間継続したものです。

しかし,マンネリ(形骸)化したのでしょうね。息子は「楽しくない。」と言い始めたのです。それとともに,目的性を喪失したようです。
「何のためにやっているのかわからない。」
したがって,息子にとっては斬新で,「楽しい(やってみたい)!!」と思える新たな方法が必要になったというわけです。
(「外発的動機づけ」ですが,それも必要かと。「外発的動機づけ」が「内発的動機づけ」に変化すれば良いのですから。)

しかし,マンネリ(形骸)化したのでしょうね。息子は「楽しくない。」と言い始めたのです。それとともに,目的性を喪失したようです。
「何のためにやっているのかわからない。」
したがって,息子にとっては斬新で,「楽しい(やってみたい)!!」と思える新たな方法が必要になったというわけです。
(「外発的動機づけ」ですが,それも必要かと。「外発的動機づけ」が「内発的動機づけ」に変化すれば良いのですから。)

そのような折,塾長が見つけてくれた本がありました。

家庭療育の参考書

『無理なくできる!発達障害の子が伸びるいちにちいっぽの育て方)』
発売日: 2018年08月28日,著者/編集: miki,レーベル: ヒューマンケアブックス,出版社: 学研プラス,発行形態: 単行本,ページ数: 216p,¥ 1,512

【著者であるmikiさんのアメブロ】
通常学級でがんばる発達凸凹ちゃんの家庭療育を応援!『いちにちいっぽ相談室』[1]現在,リンク先が不明です。(2020.4.12時点)

とても読みやすく記述されており,内容は「そうよね~。」と納得することがたくさん!! 私がこれまで取り組んできたことが無駄ではなかったと安堵し,そして,これからの課題をもしっかりと見据えることができました。

私にとっても,息子にとっても,次のステップに進むため,参考になるものが必要だなと考えていたので,この本にめぐり逢わせてくださった塾長に,そして,著者のmikiさんに,心から感謝いたしております。
(mikiさんとはメッセージのやり取りもさせていただきました。ご多忙の折,誠にありがとうございました。)


【スケジュールの見える化とスモールステップ】

軽度の自閉スペクトラム症である息子にとって,朝の身支度は毎日バタバタで戦場のようです。毎日同じことの繰り返しなのに,何がそんなに難しいのか・・・。と思われますよね?

それは,息子にしか分からない時間の感覚や,想像や予測が困難なことなど,要するに,実際にそこにないもの(視覚化できないもの)を把握・理解することが,とても難しいのです。(息子の時間の感覚は,「その時」でしかありません。例えば,6時59分を「7時だね。」と言うと,「えっ?! 違うよ!! 6時59分よ!!」と返ってきます。たった1分1秒であっても,大きな括り(概念的な思考)として理解することが難しいのです。)

上掲の書籍の中に,次のようなことが記述されていました。

「時間」「予定」「ルール」「約束」などは,目に見えません。
見えないものは,息子には想像したり理解したりすることが困難です。
一番やりたいことだけが頭の中にあり,ほかのことを考えることができない,見通しや優先順位をつけることができない,という状態になっていて,それが不安やパニックを引き起こしているようでした。

(前掲書,p43)

まったくもって,その通り!! だからこそ,これまでも幾度となくスケジュール表を作成し,改善を繰り返してきたのです。視覚化です。

しかし,月日が経つと同時に,どうしても効果が薄れていくのが難点でした。改良をしないといけないと考えていた際にこの本にめぐり逢い,参考となるスケジュール管理法を見つけたのです。

それを元に作成したのが…

自閉スペクトラム症のスケジュール管理
ホワイトボードと両面マグネットシートを使用したスケジュール表

以前,壁に貼っていたスケジュールの内容をマグネットシートに書き,やったら裏返し,色を変えるようにしました。こうすることで,「やった(白)」「やっていない(赤)」の区別がしやすく,また,赤色が信号機のように危険をイメージすることから,自分で「やっていないこと」にしっかりと気づき,認識できるようになったのです。

上記のスケジュール管理に加えて…

トークンシステム用のカレンダー
できたスタンプ用のカレンダー

朝と夜,それぞれ「やること」が終わったら,スタンプを押し,スタンプが5つ溜まると「金ピカシール」を1枚貼ることにしています。金ぴかシールが5枚溜まると,大好きな某ドーナツ店のドーナツをプレゼント!! いわゆる「トークンシステム」の活用です。
(9月は12日から始めたので,金ぴかシール5枚でご褒美ですが,息子と話し合い,10月からは金ぴかシール10枚でご褒美としています。)

スタンプを集めると金ぴかシールがもらえる楽しみと,金ぴかシールを集めると願いが叶うという達成感を,味わうことができるわけです。スタンプも3種類を用意しました。

「よくできたね」「できたね」「まあまあできたね」

当然,息子は「よくできたね」スタンプを目指して,努力を重ねるのです。

これまでのところ,朝夜併せて,「(全てが)できなかった」ことはありませんでした。ですが,いつの日か,そういう日が訪れることでしょう。そうした場合でも,スケジュール表に「×」を付けることはしません。それは,すぐにやる気を失ってしまうからです。「できなかったこと」があっても,何か「できたこと」は必ずあるはずです。その点をしっかりと褒めることが大切です。「××はできなかったけれど,○○はできたね。」と。

そういうわけで,スタンプにもレベル差を付けて,色分けしているのです。

・10個以上できたらオレンジ色。(よくできたね)
・7~9個できたら緑色。(できたね)
・1~6個できたら青色。(まあまあできたね)

ここで,大切なことは,「できたこと」がいくつあったら,どの色のスタンプにするか,息子と話し合いながら,決めたことです。所謂「数値化」です。

息子本人が,自らの現状を数値化(スケーリング)して,納得して決めた数値目標には,本人もやる気を持って行動できるのです。しかも,具体的で明確な数値目標は,目標達成(理想のイメージへの到達)には効果的です。どのレベルに辿り着けばよいかが,息子の中で判然とするからです。

また,仮に「できたこと」が前日の朝は「10個以上」あったのに,本日は「4個」であったという場合には,息子と話し合って,翌朝の目標を定めます。その時に,無理やり高い目標にしないことです。一挙に,「翌朝の目標は10個以上」としないで,「5個」とか「6個」にするのです。

順調にできていたこと(目標を達成していたこと)ができず,目標の階段を滑り落ちた場合には,また,達成できそうな小さな目標(ゴール)から,達成できていた小さな目標(ゴール)までの階段を少しずつ登り直せば良いのです。この発想が,「ソルーション・フォーカスト・アプローチ(SFA)」(解決志向アプローチ)に基づく,「スモールステップ」と呼ばれるものです。

簡単に述べれば,クライアントと話し合いながら,問題点に着目するのではなく,「できること」に着眼することにより,小さなゴール(目標)を設定し,クリアできたならば,また,次のステップとして,小さなゴール(目標)を設定・クリアする。そうしながら,徐々に理想のイメージ(大きなゴール)に近づくというカウンセリング(心理療法)の理論です。

予断になりますが,塾長は教員(教育行政職員)の折,不登校の児童生徒にかかわる自らの実践において,この「ソルーション・フォーカスト・アプローチ(SFA)」がとても有効だったと言います。

例えば,高校生で,1年間の欠席日数が200日を超える生徒(塾長が担任をした生徒さん)が,登校できるようになったと。 (現在は,無理に登校しなくて良いという国の考え方があります。)塾長のことだから,いつになるか分かりませんが(笑),その不登校への取組みについて,ブログにするそうです。

トークンシステムのスタンプとシールが貼られたカレンダー
押されたスタンプと金ぴかシール

【息子の気分は1日ごとに変わる】

このスケジュール管理表を初めて見た朝,息子の目がキラキラと輝いていました。新しい刺激に興奮して,ゲーム感覚で「楽しい!!」という気持ちが大いにあったと推察できます。

そうは言うものの,(この方法を試し始めてから,基本的に「楽しい!!」という感覚はあるのですが,)朝,目が覚めた時の気分によって,どうしても息子には調子の良し悪しの大きな波があるのが実情です。息子の起きようとするタイミングと私の声掛け(「おはよう!!」など)のタイミングがうまく合わないと,目覚めた時の気分(良い夢を見ていたとかまだ寝ていたかったとか)によって,俗にいう「やる気スイッチ」のレベルが異なってしまいます。

前掲書の著者であるmikiさんも記述されていましたが,目覚めて家を出るまでの時間を,いかに楽しく過ごせるかで,その1日が決まるといっても過言ではありません。朝の気分がそのまま1日に影響されるので,学校生活の安定も左右されてしまうのです。

登校する息子に,「行ってらっしゃい♫」と心穏やかに言えるのか言えないのか。登校していく息子が,「行ってきます♫」とニコニコの笑顔で言えるのか言えないのか。これができるようになるには,朝のスケジュールをいかにスムーズにこなせるかが必要なのです。

逆に,夜も同様で,寝るときの気分がそのまま朝に影響を及ぼすことになります。お互いに「おやすみなさい☆」と心穏やかにいうことができたら,翌日の目覚めはスッキリしていることが多いのです。だからと言って,毎日毎日,平穏無事ということではありません。(息子)怪獣や(母)鬼が出現し,対決することももちろんあります。(笑)けれど,この状況を母子で力を合わせて乗り越えていくからこそ,家族としての成長があるのだと思います。

とりあえずの目標は,定型発達の人ならば,日常,当たり前に「やっていること(食事や排泄など)」を,スケジュール表から取り除いていくこと(できるようになって,スケジュール表に載せる必要がなくなること)。少しずつ,スモールステップで,「息子と一緒に成長していけたら良いな。」と思います。


【途中経過と今後】

このスケジュール管理を始めてから,息子は,とても落ち着いて学校生活を送っているそうです。担任の先生とは,日常的に息子の様子について,情報交換をさせていただいています。学校での様子や家庭での様子を連絡し合うのです。

その担任の先生のお話から,少しはほっとしているのですが,いつ,落ち着きを失うかは全く予想ができません。息子の様子を毎日,細かく観察しながら,息子の将来の成長を願って,既に新たな方策を検討している,今日この頃です。

関連記事
「生徒指導の三機能とメンタリングとの関係について」(住本小夜子,BLOG「鍛地頭-tanjito-」,2018.6.7)
「朝の気分で1日が決まる」(住本小夜子,当塾公式ホームページ,2018.5.21)
「「家庭の教育方針」と「学校等の教育方針」」(住本小夜子,当塾公式ホームページ,2018.2.26)
「情報共有でこどもの良さをどんどん伸ばそう!!」(住本小夜子,当塾公式ホームページ,2018.6.3)

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